蝶の爪 2004年第5回現代俳句協会年度作品賞
西口はよく晴れている花衣
学校をはみ出す桜海に舞う
千年の桜の中に手を入れる
桜ごと帽子ごと姉はいなくなる
口車花時にのる楽しさよ
蝶々の爪立てられし我が腕
桃源郷人はどこにいるのだろう
青ばかり使う日子猫抱きにけり
潮干狩りその鼻歌はまちがっている
五月闇登りしごとくバスに乗る
おとうとのひよこよくなく夜のバス
扇風機ひとりひとつずつ夫婦
瀬戸物の大事にゆきかう夏の森
牛みるみる冷やされし色にかわる
片恋のキャベツおかわりする自由
ナイターを抜ける途中の光る橋
一番に押す停車釦天の川
セロファンを曇らせるのはどの桔梗
縄跳びを休んでいたる羊雲
二百十日細かく刻む紅生姜
満月の真水底を抜こうとする
立冬のまだやわらかいふくらはぎ
つなぐ手を離しお降り確かめる
冬の月シェフが光を浴びに出る
かまくらをはみだす布のありにけり
料峭のひかり育てる空き地かな
少年がシュートするたび桜咲く
鍵穴の錆のかまわず桜咲く
びしょぬれの桜でありし日も会いぬ
いたくないかたちに眠る花月夜