ヤガマニア
推薦曲 金色のサプライズ
哀愁パラダイス
消えたサイゴンの娘
準推薦 ルーザー
コスモスの夜
約3年間のアルファムーン時代の最後を飾るアルバム(86年10月発売)で、開放的な明るさ・楽しさではこの時代の3作のなかで一番。八神純子自身、自作のアルバムのうちでベストスリーの一枚とのことである。
前作純の、地味などんよりくもったモノトーンの世界から一変して、カラフルな原色の世界へ。それは、ロンドンとロサンゼルスというレコーディング場所の違いにも象徴されている。人を食ったようなアルバムタイトル(ヤガミとマニアを合成した造語)、素っ頓狂な表情をとらえたジャケット写真も、ポップな内容に似合っている。
前作の純では、八神とジョン・スタンレーのコンビが自分たちがやりたいことを作品化したという感じだったが、ヤガマニアはあきらかにファンの声を意識した作品となっている。彼女自身「ファンのためにファンと一緒に」をテーマに製作したと語っている。
―今回、ファンと一緒にアルバムを作りたかったんです。わたしをずっと応援してくれているファンへの感謝の気持ちをこめたかったの。
レコードにする前に実際にお客さんに聴いてもらいたくて、今年の5月のライブでいくつか披露したの。楽曲としてはまだ未完成だったけど、お客さんのノリや反応を見れたからどういう風に手直しすればいいかよくわかったわ。リズムのノリが足りなかったり、歌と演奏がうまくかみ合わなかったりしてたから。そんな時ってお客さんは手拍子もしないし、反応がないのよね。
こうしたファンの反応を見ながらの楽曲の手直し作業、2ヶ月のロスレコーディングを含めて制作期間には半年かかっている。
ラブソングが中心だが、Brother & Sisterやコスモスの夜は、それぞれ「人と人とのつながり、こころのふれあい」、「はるか遠い宇宙から地球を想う愛」、というように、単なる男女の恋愛以上の人間愛、地球愛というメッセージも込めた作品となっている。(スケールの大きな地球愛といえば、ヤマハ時代のヒットシングルMr.ブルーが思い出されるが、あの曲はあくまでNHKの宇宙科学番組のテーマ曲として作曲依頼をうけて書いた曲なので、必ずしも彼女自身のメッセージを歌っているわけではない)
Brother&Sisterについては、
―出会ったひとがすべて心と心を固く結ぶことができたら、という願いをこめて作ったの。この曲がアルバムを聴いたファンとわたしとの架け橋になってくれればいいなって思います。
と語っている。実は、私自身は人類みな兄弟的なメッセージソング的なものはあまり好きでないので、Brother
& Sisterという曲は苦手なのだけども・・・。
コスモスの夜は、ファンからプレゼントされた「コスモス」という本からヒントを得た作品だそうだが、これはおそらく当時テレビ番組にもなった、科学者のカール・セーガンの著書のことだと思われる。宇宙と地球の壮大な歴史を、当時の最新の科学に文化・文明論を織り交ぜて語ったこの本に触発されてコスモスの夜に歌われているSF的な壮大なラブソングが生まれたのだろう。
−スケールの大きな愛の歌って、これまでは歌いこなせる力がなかったと思うの。でもいまは歌いこなせる自身があるわ。
このアルバムで当時から一番よく聴いているのは金色のサプライズと哀愁パラダイス。両曲とも今ひとつファンの間で人気がないようだけれども、金色のサプライズは特にエンディングへかけての胸のすくような渾身のボーカルがたまらないし、哀愁パラダイスはタイトルどおり哀愁を帯びたメロディーとラリー・ウィリアムズのサックスがいい。消えたサイゴンの娘〈別テークあり。JUNKOアトランダムのコレクターズアイテムの章参照〉の物悲しいメロディーにも心惹かれるし、ルーザーのエネルギッシュなボーカルも痛快。
Fun Cityはアルバムに収められているバージョンよりも切れ味鋭いシングル・バージョンのほうが断然おすすめだ。右の画像はヒットスタジオでのFUN CITY熱唱の姿。
個々に見ると結構マイナー調の切ないメロディーも多いのだけど、全体の印象としては、やはり純の陰・暗に対してヤガマニアのイメージは陽・明である。
レコーディングには当時のツアーのバックバンドからボビー・ワトソン(ベース)、マーティ・ブレーシー〈ドラム〉が加わっている。